③自由診療で行う自然な色が出せる審美的補綴治療
虫歯治療の際に詰めた銀歯など金属の詰め物(インレー)や被せ物は見た目が悪く、気にする人が多いものです。また金属アレルギーがある人は、歯の詰め物が原因でアレルギーが発症して、症状が出る場合もあります。審美的補綴は金属ではないセラミックス(陶器)を使い、自然な色調の白さと強度のある詰め物や被せ物にする治療です。セラミックスなら金属アレルギーの心配もありません。
セラミックスは治療方法と素材で多くの種類に分類され、素材としてはジルコニアセラミックス、ガラスセラミックス、ハイブリッドセラミックス、アルミナ、ポーセレン、金属焼付セラミックス(メタルボンド)などがあります。
保険治療で行う白い歯との違いは?
保険治療でも、銀歯ではない白い素材が使われることがあります。これは硬質レジン(プラスチック)で、金属アレルギーにもならない優れた素材ですが、摩耗しやすく耐久性に問題があります。また硬質レジンには吸水性があり、その結果劣化や変色が避けられません。劣化すると硬質レジンと歯の隙間から虫歯が再発することもあります。
自由診療で使用するセラミックスは吸水性がないので、臭いや変色の心配がありません。透明感のある美しい白さを保つことができます。また強度があり精密な加工ができるので、適合性が高いのが特長です。ハイブリッドセラミックスという材質が用いられることもあります。これは色の再現性や質感はセラミックスよりやや劣りますが、セラミックスほど
硬くないので、作成しやすく安価なので広く使われています。
セラミックスを使った審美的補綴の治療例
● ラミネートベニア
歯の表面を薄く削り、セラミックでできた爪の厚さほどのチップ(シェル)を特殊な接着剤を用いて治療する方法です。エナメル質の形成不全や歯並びが悪い場合なども、元の歯の色に左右されず、自然な仕上がりで、きれいに整えることができます。歯を削る量が少ないので、神経を痛めることがなく治療ができます。エナメル質形成不全や歯が少し欠けてしまった場合、いわゆるすきっ歯を美しい歯並びにする時に行う方法です。
●セラミックインレー
治療のために削った部分に充塡する人工材料の詰め物のことをインレーと呼びますが、この材料をセラミックスに変えることで、金属の詰め物に比べ、自然な白さになり、金属アレルギーの心配もなくなります。
●セラミッククラウン
虫歯の進行程度によってはクラウン(被せ物)による治療となります。この被せ物にセラミックスを使用することで、金属や歯科用プラスチックでは得られない、透明感があり、自然の歯と見分けのつかない白い歯を取り戻すことができます。
新世代のオールセラミックスである IPS e.max プレスの治療
IPS e.max は従来のオールセラミックスの素材と比べて審美性と耐久性を向上させた新世代のオールセラミックスです。主成分である二珪酸リチウムが非常に強い強度と耐久性をもったセラミックスです。用途としてはインレー、ラミネートベニア、アンレー、クラウン、ブリッジ等に幅広く使用できます。
また天然歯と分子レベルで強固に接着するのがe.max の特徴ですから、治療箇所の隙間から汚れや細菌が入り込むことがなく、そこから虫歯になることがありません。隣接する歯の色調と、ほとんど変わらないように治療ができるので、当院の院内ラボでも導入しています。
CAD/CAM(computer aided design/computer aided manufacturing:コンピュータ支援による設計と製作)
歯科の分野にCAD/CAMシステムが導入されたことによって、失われた歯を修復する技術が大きな転換期を迎えています。
平成26年度の診療報酬改定により、歯科用CAD/CAM装置を用い、均質性および表面 性状を向上させたハイブリッドレジンブロックから削り出された小臼歯部の歯冠補綴であるCAD/CAM冠が保険導入されたことで、広く普及することになるでしょう。
歯科治療の際に口腔内に装着される修復物や補綴物(インレー、部分被覆冠、全部被覆冠、ブリッジ、部分床義歯、全部床義歯、インプラント上部構造など)は、そのほとんどが、手作業により製作されてきました。その製作工程(設計や加工)の一部をコンピュータ制御の機器に置き換える一連のシステムをCAD/CAMといいます。
歯を修復する「補綴物」は患者さんそれぞれの口腔内で、その「形態や機能」を満たすこと、そして審美的な要望に応えて一つひとつが再現されなければなりません。
そのために、これまで行われてきた「経験と勘」による技術だけでなく、データを正しく採取して、それに基づいた科学的根拠のある高精度の技工物を作る必要があります。そこで技工の分野に、建築や工業製品の設計に使われていたCAD/CAMが導入されました。
歯科のCAD/CAMシステムでは再現する素材は単一なので強度の安定性があること、情報の保存と伝達が効率的に行われるのが特徴的で、コンピュータによる自動化で製作期間の短縮ができます。患者さんへの負担が軽くなることも大いに期待できるところです。