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歯科治療お役立ちブログ

これだけは知っておこう歯に関する基礎知識

その1:歯の構造

現在の自分の歯の状態を知る上で、歯の構造を正しく理解しておくことも大切なことです。

たとえば虫歯もないのに熱いものや冷たいものを食べたり飲んだりする時、歯がしみるという人もいると思います。これは知覚過敏によるものですが、知覚過敏は何らかの原因で、歯のエナメル質の内側の象牙質が露出したために、刺激に対して過敏になって起こります。健康な歯の構造・状態をしっかり頭に入れて、現在の自分の歯の状態を判断する基準にしましょう。

歯の構造は大きく歯茎から出ている歯冠部分と骨に埋まっている歯根部分に分かれます。

歯冠は、表面の白い部分がエナメル質で最も硬く、その内側に象牙質があります。象牙質の中には歯髄があり、ここには神経や血管が通っています。

歯根は、歯槽骨の中に植わっていて、顎の骨で支えられています。歯根の外側を覆っているセメント質と歯槽骨との間には歯根膜があります。歯根膜は強く噛んだときの圧力をやわらげ、微妙な噛み心地を脳に伝える働きをします。

健康な歯とは、虫歯や歯周病がなく、歯冠、歯根、歯茎、歯槽骨が健康な状態を保っている歯を指します。専門的にいうと「ピンキッシュ・シャープネス・スティップリング」であれば健康です。健康な歯茎はきれいなピンク色をして、ぴったり歯と接して引き締まり、歯と歯の間の歯茎の形もシャープな形をしています。歯の周囲の歯茎に小さな粒粒が見られるのも健康な歯茎の現れです。ご自分の歯を鏡に映してしっかりと点検してみてください。

その2:虫歯・歯周病は感染症

虫歯や歯周病になる理由として思いつくことはどのようなことでしょう。
甘いものをたくさん食べるから? 歯磨きをしないから?
どれも間違いではありませんが、正確な答えではありません。

1960年代後半、虫歯は口の中に棲むある特定の細菌叢、その細菌が栄養とする食べ残し(糖分)、細菌がくっつく歯質、の3つが原因と考えられていました(Keyes の輪)。
しかし70年代に入るとこの3つの原因に、これらの原因同士がどれだけ接触していたか、つまり接触時間が短ければ虫歯にならない、長ければ虫歯になるとして「(接触)時間」をつけ加えたDr.Newbrun の「4つの輪」が虫歯発生に対する主流の考え方となりました。

虫歯と歯周病は、人が歯を失う原因として最も大きな割合(合わせて約75%)を占める疾患ですが、これらがいずれも感染症だということを、まず覚えておいてください。

虫歯の原因菌(細菌)は、それだけで歯(宿主・歯質)を攻撃するわけではありません。食べ物に含まれる糖質から乳酸などの強力な酸をつくり(糖分・環境)、時間をかけ(時間)歯を溶かす(脱灰)のです。これが虫歯(う蝕)です。

いっぽう歯周病は、まず歯の周囲の歯肉(歯周ポケット)に炎症を起こし、進行すると歯を支える歯根膜・歯槽骨を溶かしてしまう、文字どおり歯周組織の病気です。重度になると歯茎に膿がたまり出血し、最後には歯槽骨が喪失し、歯が抜け落ちてしまいます。

さらに、歯周病菌は口の中だけでなく、口腔内を通る血管から血液とともに全身に運ばれ、歯性病巣感染症(虫歯や歯周病が原因でさまざまな内科的疾患を引き起こす)となる危険性も指摘されています。

その3:虫歯や歯周病は歯垢除去(デンタルプラーク)で予防できる

虫歯や歯周病の原因となる細菌やカビは、主に歯し 垢こうで繁殖します。歯垢とは、一般に歯の表面や歯と歯茎の境目などに付着した黄白色を帯びた粘着性の物質のことを指します。

食事をすれば歯垢は必ず付いてしまいますが、歯垢は食べ物のカスではなく、糖分や炭水化物が菌によって分解されてできた物質で、正体はまさに「菌の巣」なのです。歯垢1ミリグラム(1000分の1グラム)に数十億ものウイルス、細菌や真菌(カビ)が棲みついているといわれます。

歯垢は軟らかく、歯ブラシやデンタルフロスなどによって取り除くことができます。しかし、歯磨きで完全に落としきれないと、やがて唾液に含まれるカルシウムによって石灰化し、歯石になってしまいます。

怖いのは、繁殖した菌がつくり出す、口腔バイオフィルムです。口腔バイオフィルムは強力なバリアを形成し、粘着性を持っていて通常のブラッシングでは落ちないばかりか、抗菌剤や抗生物質さえ通さず、白血球による攻撃も跳ね返します。虫歯や歯周病の原因菌は、自らつくり出した口腔バイオフィルムに護られて、内部でどんどん増殖し、毒素を出して歯や歯茎をむしばんでいくのです。

ですから、普段から正しい歯磨きをして、歯垢をしっかり落とすこと、そして定期的に歯科医院を受診して、歯のクリーニングで歯垢や歯石を取り除くことが大切です。そうすれば虫歯や歯周病も軽症のうちに発見でき、重症化する前に治療することができます。

その4:無くした歯は二度ともとにもどらない

私たち歯科医師は、悪くなった口腔内に対して治療を行います。治療技術も日進月歩。
ブログでも、さまざまな最新の歯の治療法について紹介しています。しかし本当は、健康な口腔内や歯の状態を保つことこそが大切なのです。

歯を「治療する」といいますが、切り傷などの怪我の治療とは違います。たとえば虫歯治療で歯を削るということは、元通りに噛めるようにするために、人工物で補うということです。詰め物も被せ物も、入れ歯もインプラントも人工物です。天然歯は一度失ったら、二度と元の形に再生しません。

ですから、歯科医院は本来、歯が悪くならないように通うべきところです。定期的に通って、予防をするのが一番。第7章の「予防歯科」と「歯科人間ドック」でご紹介していますが、私どもの医院も、予防歯科に力を入れています。予防に勝る治療はありません。私たち歯科医師と歯科医院のスタッフが、取り換えのきかない大切な歯を生涯守り続けていくためのお手伝いをいたします。

その5:歯のある人は生涯にわたって健康

食べることは、命をつなぎ健康を支えること。毎日の食事をおいしく、楽しく食べるためになくてはならないのが元気な歯です。しっかり食べ物を噛むことで唾液の分泌は促され、食べ物の消化・吸収もよくなります。

実は、歯と生活習慣病との間には深い関係があることもわかっています。たとえば、糖尿病が歯周病を引き起こすことがあることはよく知られています。

糖尿病にかかると免疫力が低下して、歯茎の炎症などが起こりやすくなります。その結果、歯周病にもかかりやすくなるというわけです。

また、歯周病がひどくなると歯茎などの炎症によって分泌される物質TNF‒α(炎症性サイトカインの一種)が、インスリンの働きを妨げて、糖尿病を悪化させるともいわれています。最近の研究では歯周病を改善することによって糖尿病の状態がよくなるという報告もあります。

歯周病が悪化すると、心内膜炎という心臓病を引き起こすこともあります。歯周病菌が血液中に流れ込み、血管を巡って心臓の内膜に付着するためです。心筋梗塞や狭心症にかかりやすくなることもわかってきています。歯周病菌が動脈硬化を起こしている血管に付着すると、血管を狭める作用を促進すると考えられているのです。

歯周病は認知症とも深く関わっています。脳血管性認知症の原因は脳卒中であり、それは脳の血管で起こる動脈硬化に起因しています。ですから予防には動脈硬化を防ぐことが何よりも大切。歯周病を防いで動脈硬化のリスクを減らすことが、認知症になるリスクを減らすことになるのです。

さらに、歯の健康とメタボリックシンドロームとの関係も明らかになってきました。健康な歯で規則正しい食事をすることで間食が減ります。しっかり噛んで食べることによって満腹感も得られやすくなります。噛むことで脳内にある神経ヒスタミンという物質が活性化され、食欲を抑えてくれることもわかってきているのです。

しかも、歯周病は歯を失う大きな原因のひとつです。痛みなどといった自覚症状が出にくく、気づいたときはすでに歯を保てないということも少なくありません。とくに高齢になると、歯周病で歯を失ってしまう割合が高くなります。

わが国では「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という「8020(ハチマルニイマル)運動」が、厚生労働省と日本歯科医師会の呼びかけで進められています。年をとっても20本以上の歯があれば、ほとんどの食べ物をしっかり噛みくだくことができます。
もちろんじっくり味わいながら食べることにもつながります。80歳になっても自分の歯を20本以上保つということは、まさに健康で豊かに、そして長生きをするための重要な目標といえるのです。

「年老いて歯が抜けてしまうのは老化現象だからしかたない」。そう思われがちですが、歯周病を正しく予防・治療すれば、いくつになっても自分の歯を保つことは可能です。それをサポートするのが、私たちの使命です。

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